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NBAプレイオフ・レビュー クリッパーズーロケッツ ゲーム3 [NBA]

NBAプレイオフ、カンファレンス・セミファイナルは各カード2試合を終え、シード順下位チームの本拠地での戦いにうつった。

西地区2位ロケッツと3位クリッパーズの対戦はロサンゼルスへ。ヒューストンでの2試合は1勝1敗。クリス・ポールを故障で欠くクリッパーズがロケッツのホームコートアドバンテージを崩し、ホームに戻ってきた。

この試合からクリッパーズはクリス・ポールが復帰。脚の状態は万全ではなく、トランジションからフロントコートへボールを押し上げる場面や、本来、ドライブでバスケットへアタックするであろう場面では自重する様子が見られたが、スパーズ戦のようにあからさまに脚を引きずるところは見られず、順調な回復がうかがわれた。ドック・リバースはポールのプレイタイムを30分程度に制限したいようだ。

序盤、クリッパーズはレディックのジャンプシュートが好調。ポールとのピックアンドロールからグリフィンのダンクも決まり、主導権を持ってゲームを進める。スパーズとのシリーズでほとんどプレイタイムが無かったホーズも出場。ハワード対策で多くのビッグマンをゲームに慣らしたい意図もあるだろうが、スパーズ戦でタイトなエイトメン・ローテーションを採用したのと比べれば、余裕のある用兵。

一方のロケッツは、ドワイト・ハワードが好調。ジョーダン、グリフィンを相手にアリウープとベビーフックで得点を重ねる。外角ではジェイソン・テリーが好調。チームとして多投するスリーポイントが不調だっただけに、期待を持たせる立ち上がり。

前半はクリッパーズがリードする展開ながら、グリフィンが3ファウルでベンチへ。ロケッツはオフェンスリバウンドで粘りを見せ、最後はハーデンのブザービーターが決まり、7点ビハインドまで詰めて折り返した。

後半、ロケッツは長身で守備のいいトレバー・アリーザをフェイスガード気味でポールのマークに付け、流れを変えようと試みる。この作戦はクリッパーズを困惑させたが、得点差を詰めるまでには至らない。しかし、プレイタイムを制限されているポールが6分でベンチに下がると、ロケッツは5点差まで追い上げることに成功した。

しかし、ここからクリッパーズの控えポイントガードのオースティン・リバースのショーが始まる。ハーデンの上からスリーを決めたのを皮切りにドライブからファウルをもらいながらレイアップ、速攻からのレイアップなど約3分で13点をあげ、チームの18-0のランに貢献。第3クオーター終了時点で、99-76の23点差として試合を決めてしまった。

オースティンは25得点。ハーデンのお株を奪うクック・サインも見せた。
陰に隠れたがレディックも31点。グリフィンが22点14リバウンド。
復帰のポールも23分のプレイで12点、7アシスト。トップフォームではないものの、チームに落ち着きをもたらし司令塔としての役割をきっちり果たした。

一方のロケッツはハーデンが25点11アシストとスタッツ上は鬼神のような働きを見せたが、印象としては薄かった。特に第3クオーターの終盤ではリバースを自由にし、オフェンスも淡泊に。フリースローも5本に終わり、果敢なドライブからファウルをもらいフリースローで稼ぐスタイルも鳴りを潜めた。ビバリー不在の中で、多くの役割を背負っているハーデンだが、ここに来てやや負担に耐えきれなくなっているようだ。
チーム全体としても大味で、試合中好不調の波が大きい。第3クオーター終盤のランでゲームを決められた、この試合が象徴的だ。
もう1点あげるとシリーズを通じてスリーポイントシュートが不調。これは、ハーデン、ハワードがディフェンスを引きつけてオープンでシュートを放つ形が作れていないことが原因と考えられる。これは、ハーデン、ハワードにある程度、得点を献上しても外角のシューターをオープンにさせないというクリッパーズ・ディフェンスの戦術が成功しているのだろう。

もともと選手層の薄さが最大の弱点といわれていたクリッパーズにとって、ベンチの活躍で大勝したことは大きな意義がある。スパーズとのシリーズを制し、ポールの不在を乗り越えて、チームとして大きく成長しているように見える。優勝候補に急浮上してきたといっても過言ではないだろう。

【NBAプレーオフ】ポイントガードの健康がセミファイナルの行方を決めるのか [NBA]

NBAプレイオフは、1回戦を終えた時点で前年覇者のスパーズが敗退。期待されながらレギュラーシーズンの成績が振るわなかったチームも調子を上げてきて、実力の拮抗したチーム同士によるカンファレンス・セミファイナルに突入した。
注目すべきは、プレイオフで重要度の増すポイントガードの選手に故障者が続出していること。この状況にチームとしてどう対処するかも勝負の行方に影響を与えそうだ。

【東カンファレンス】

「アトランタ・ホークス(1)対ワシントン・ウィザーズ(5)」
今季のシンデレラチーム、ホークスはシーズン終盤の失速を引きずり1回戦もネッツ相手にやや苦戦。しかし、先発で唯一オールスターを逃したデマーレ・キャロルが得点でチームをリードしている点は、全員バスケのホークスらしさを発揮しているといえる。
一方、レギュラーシーズンで50勝に届かなかったウィザーズだが、プレイオフに入ると難敵ラプターズをスイープ。調子を上げてきている。
初戦はジョン・ウォール、ブラッドリー・ビールの活躍でウィザーズが敵地で逆転勝ち。しかし、第2戦はウィザーズのPG、ウォールが肩の負傷で欠場。ホーフォード、ミルサップがリードしたホークスが勝利を収めた。
ウォールは前日まで第2戦の出場を予定しており、患部を休めるために大事を取ったという見方が強い。第3戦は万全に近い状態で戻ってくるだろう。オールスターを4人揃え穴が無く安定感があるのがホークスの強みだが、プレイオフの経験は少なく勝負所でボールを預ける絶対的エースがいない。一方、勝負強さでいえば、ウォール、ビール、ポール・ピアースがいるウィザーズに分がある。ホームで連勝することができれば、ウィザーズのアップセットも十分ありえる。

「クリーブランド・キャブス(2)対シカゴ・ブルズ(3)」
ヒート時代を含めて、5年連続ファイナル進出3度目のリーグ制覇を目指すレブロン・ジェイムズ率いるキャブスは、シーズン中のトレードを境に調子をあげてきた。現在まで生き残っているチームで数少ない健康な先発PGのカイリー・アービングは、ゲームメイクとアタックの役割をレブロンとシェアしながら、チームをリードしている。しかし、チームとして気がかりなのは、セルティックスとの最終戦のトラブルによる選手の欠場。調子を取り戻してきていたケビン・ラブは故障により今季絶望。JRスミスは暴力行為による出場停止でセミファイナル最初の2試合をプレイできない。
一方、優勝候補と目されながらも故障者続出でレギュラーシーズンを苦しんだブルズ。
シーズン終盤の故障でプレイオフを危ぶまれたデリック・ローズも奇跡の復活で、ベストメンバーが揃った。
第1戦は、序盤からリードを保ったブルズが、キャブスを92点に抑えて、敵地で先勝。ローズ、バトラー、ガソルが20点超え。一方、キャブスのアービングには30点を奪われたものの、レブロンにはフリースローを2本しか与えず、19点6ターンオーバーと押さえ込んだ。
しかし、この試合の終盤、ローズが右肩を負傷。第2戦以降出場予定とはいうものの、シリーズの決着に影響を与えるかもしれない。
キャブスとしては、二人の選手を失ってコンビネーションが整わないが、なんとかホームの第2戦を死守して、JRの復帰を待ちたいところ。2連敗でシカゴへ向かうことになれば、一気にシリーズの流れがブルズに傾くかもしれない。

【西カンファレンス】

「ゴールデンステイト・ウォリアーズ(1)対メンフィス・グリズリーズ(5)」
シーズンMVPに輝いたステファン・カリー率いるウォリアーズはプレイオフでも好調。外角シュートを多投し、小さいラインナップを好むスタイルはプレイオフでは不利という従来の定説を意に介さない快進撃を続けている。スパーズが姿を消した現在、王者の座がより現実的に見えてきた。
グリズリーズは1勝の差に泣き第5シードに沈んだもののプレイオフの経験はリーグ屈指。マルク・ガソル、ザック・ランドルフのツインタワーを擁し、ハーフコート中心の遅い展開でロースコアゲームを狙うスタイルはウォリアーズの正反対。得意の展開に引きずり込めば、ウォリアーズ相手でも勝機はある。
しかし、グリズリーズはPGのマイク・コンリーがブレイザーズとのシリーズで顔面を骨折。コンリーの欠場した第1戦は、カリーが22得点で引っ張ったウォリアーズが完勝。しかし、第2戦でフェイスマスクを付けたコンリーが復帰すると、コンリーの22得点の活躍もあってグリズリーズが勝利。今季、ホームでわずか2敗のウォリアーズにオークランドのオラクルアリーナで土を付けた。
勝利した第1戦もFG50%超で101得点と、ウォリアーズは得意のアップテンポな展開に持ち込めていない。メンフィスに移動した第3戦以降もグリズリーズ得意のロースコアのゲーム展開になれば、ウォリアーズが追い込まれる場面が見られるかもしれない。

「ヒューストン・ロケッツ(2)対ロサンジェルス・クリッパーズ(3)」
ジェイムズ・ハーデンのMVP級の活躍で紙一重の差で第2シードを獲得したロケッツ。ゴール下の番人ドワイト・ハワードも復帰したが、唯一の懸念材料はPGのパトリック・ビバリーが故障のため不在であること。それでも、1回戦では優勝候補級の巨大戦力を擁するマブスを一蹴。実力を見せつけた。
クリッパーズは、シリーズ最終戦で脚を故障しながら決勝シュートを沈めたクリス・ポールの獅子奮迅の活躍もあって、王者スパーズを撃破してセミファイナルにコマを進めてきた。もともとベンチ層の薄さが不安視されていたが、スパーズを破ったことで改めて優勝を狙う資格があることを証明した形だ。
シリーズ緒戦はクリッパーズのポールが脚の故障で欠場。ホームのロケッツ有利とみられたが、ブレイク・グリフィンのトリプルダブルの活躍でクリッパーズが勝利を収めた。ロケッツは攻撃でハーデンが9ターンオーバー、守備ではクリッパーズに31アシストを許した。
ポールの第2戦以降の出場は当日の状況次第だが、第1戦を勝ったことで、第2戦を温存しより回復した状態でホームの第3戦に復帰という選択肢も取りやすくなった。
ロケッツはポイントガード不在の状況でハーデンの攻撃の基点としての役割が増しているが、クリッパーズはハーデンを徹底的に潰すことでロケッツの攻撃を封じようとするだろう。一方、ロケッツは戦力的には互角以上であるもののルーズにシリーズに入ってしまった。守備の的を絞り、攻撃ではハーデンを自由にするための戦術が必要だ。ロケッツに改善が見られなければ、勢いに乗るクリッパーズが一気にシリーズをものにすることもありえる。

NBAプレイオフ クリッパーズースパーズ レポート [NBA]

NBAプレイオフ1回戦屈指の好カード、ロサンゼルス・クリッパーズ対サンアントニオ・スパーズの対戦は最終第7戦へ。スパーズは天王山の第5戦を、クリッパーズは後がない第6戦をそれぞれ敵地で勝利。シリーズは、クリッパーズの本拠地ステイプルズ・センターに戻ってきた。

クリッパーズはクリス・ポール、ブレイク・グリフィンのデュオにデアンドレ・ジョーダンが絡むハイパワー・オフェンスが武器。しかし、ただでさえベンチ層が薄く先発の出場時間が長くなっている中、ベンチの得点源ジャマール・クロフォードが不調。また、FT%30%台のジョーダンに故意にファウルをしてフリースローを射たせるハック・ア・ジョーダン戦術を仕掛けてくる中、グレン“ビッグベイビー”・デイビスが第6戦で足首を捻挫。ベンチに不安を抱えている。

一方、昨季王者のスパーズは、ベンチが充実。ベテランが多いが出場時間をシェアしながらコンスタントに得点を重ねるスタイル。このシリーズは、困ったときにインサイドで得点できるティム・ダンカンが好調を維持。一方、トニー・パーカー、ディアゴ・スプリッターらがやや低調なのが気がかりなところ。試合巧者ぶりを発揮してはいるが、クリッパーズを振り切るまでには至らず、シリーズは最終戦にもつれ込んだ。


【1Q】
ゲームは、クワイ・レナードのフローターからスタート。序盤からスパーズのシュートが好調で、パーカーのドライビング・フローターが決まり、19-11とスパーズがリード。

一方、クリッパーズはマット・バーンズの2本のスリーを含む10得点で反撃開始。ポールがディアウから奪ったボールを自ら持ち込んでスリーを決め、23-22と逆転に成功。しかし、ポールがこのプレイで左ハムストリングを痛め、ロッカールームへ。攻撃の大半をポールに負っているクリッパーズは最大の危機を迎えた。

ここで、クリッパーズはポールに替わってフロアに入ったクロフォードが連続得点でリズムを保つ。スパーズはベンチから登場したパティ・ミルズ、ボリス・ディアウのスリーを決めて30-28とリードして第1クォーターを終えた。

両チームともFG%が50%を超える展開。スパーズはダンカンが9得点、積極性を見せたパーカーが6得点でチームをリードした。


【2Q】
第2クォーターは、ピックアンドロールでマルコ・ベリネリからボールを受けたスプリッターのレイアップでスパーズが先手を取ると、グリーンのスリーなどで得点を重ねる。クリッパーズは引き続きクロフォードが躍動。グリフィンへのダンクをアシストすると、ジャンパー、ドライブからのレイアップで連続得点。残り6分で39-38でスパーズのリードはわずか1点。ベンチ層の差が出やすい時間帯でクリッパーズが踏みとどまった。

ここで、ロッカーから走って戻ったクリス・ポールが戦線復帰。超満員のアリーナの士気は大いに上がる。しかし、脚の故障の影響でポールのスピードは上がらず、それに対してスパーズはレナードをマークに付けて潰しにかかる。

それに対して、クリッパーズはインサイドのグリフィンにボールを集め、45-44と逆転。しかし、残り4分、ダンカンのレイアップに対してグリフィンが3つ目のファウルを犯し、コートから追い出されてしまう。

第6戦好調だったJJ・レディックは、厳しいマークにあってこの日は不調。クリッパーズの攻撃の手段がことごとく断たれたところに、スパーズはパーカーのジャンパーなどで50-49と逆転。この窮地にクリス・ポールが奮起。ドライブからジャンパーを決めると、デイビスのレイアップをアシストし、53-52と再び逆転。

残り1分を切ったところで、スパーズはこの日はじめてのハック・ア・ジョーダン戦術。ジョーダンは2投とも外すも、デイビスがリバウンドを奪い、クロフォードのスリーに繋げる。しかし、スパーズはディアウがスリーを決めて点差を2点に縮めて、クリッパーズの57-55で前半終了。

スパーズはダンカン13点、レナード9点、パーカー8点と主軸が活躍。ダンカンがインサイドで存在感を発揮するがクリッパーズのトラブルを突いて主導権を握るまでには至らなかった。クリッパーズはグリフィン13点にポール不在の穴を埋めたクロフォードが12点で続いた。ポールの故障にグリフィンのファウルトラブルと苦しい展開を乗り切ったが、後半も不安要素を抱えたまま戦わざるをえなくなった。


【3Q】
第3クォーターは、ローポストのグリフィンからパスを受けたポールがスリーを決めてスタート。続いて、バーンズがバックドアでレナードの裏を取りダンクを決めると、スパーズのポポビッチ監督はディフェンスに隙を見せたレナードをすかさずベリネリに交代。神経質なまでの厳しさを見せる。

さらにポールがスリーを決めて、クリッパーズが65-59と6点リードすると、スパーズはグリーンが連続で長距離砲を沈めて65-64とすぐさまリードを消す。

クリッパーズがトップオブキーからのグリフィンのジャンパー、クロフォードのドライブからグリフィンのダンクで得点を重ねると、スパーズはパーカーがマッチアップのポールをドライブで攻めて連続得点し、残り4分で72-72の同点に。

一進一退の攻防が続き、76-76の同点で迎えた残り10秒、バックコートからスパーズのポゼッション。チームファウルがペナルティ未満のクリッパーズは定石通り、時間を切るためオースティン・リバースがボールホルダーのジノビリにファウルに行くが、これを読んだジノビリがシュートモーションでファウルを受け、3本のフリースローを得る。ジノビリらしいスマートなプレイで、スパーズがリードを奪ってクォーターを終えるかと思われた。

しかし、ジノビリがフリースローの3本目を外すと、リバウンドからのボールをポールが持ち上がり、3ptラインの1m手前からシュート。これがブザーとともに決まって、79-78。クリス・ポールのビッグプレイでクリッパーズが流れを引き寄せて、第3クォーターを終了。ポールは、キーになるスリーを3本沈めて、このクォーター9得点。


【4Q】
第4クォーター、スパーズはレナード以外ベンチメンバー、クリッパーズはレディックを除く先発にクロフォードを加えたメンバーでスタート。

序盤、ミルズ、ポール、ジノビリが交互にスリーを沈めると、速攻からバーンズのダンク、ディアウのジャンパー、クロフォードのドライビング・ジャンパーと続き、残り9分で86-86の同点。

ここで、スパーズもダンカンとパーカーが復帰。レナードのオフェンスリバウンドからジノビリのスリー、ベースラインを破ったグリーンのレイアップ・アンド1で、残り6分で95-91とスパーズがリード。この日の試合展開では、4点の得点差は非常に重く感じられる。

有利に立ったところで、さらにスパーズはハック・ア・ジョーダンを仕掛け、クリッパーズの焦りを誘う作戦。やむなく、クリッパーズはジョーダンをベンチに下げ、デイビスを投入。スパーズはダンカンがペイント内に攻め込み、97-92とリードを広げる。

しかし、クリッパーズはグリフィンがフリースローを2本決めると、レディックのスリーが決まり、残り5分で97-97の同点に。

この後のリードがめまぐるしく入れ替わる展開を抜け出したのはスパーズ。オフェンスリバウンドの混戦からファウルをもらいながらダンカンがねじ込むと、次もゴール下でリバウンドを拾ったレナードが得点し、105-102とリード。クリッパーズも、バーンズのスリーで追いつくも、スパーズはグリーンのスリーのミスをパーカーがタップで押し込んで、残り1:23で107-105。スパーズは、ジョーダン不在の穴を突いて、セカンドチャンスで連続得点をあげた。得点差以上にクリッパーズに与えた精神的ダメージは大きいと思われた。

しかし、次のプレイでクリッパーズは、ハイポストのグリフィンからハンドオフを受けたクロフォードがレイアップを決め、107-107。スパーズは、レナードがクロフォードの上からジャンパーを狙うがミス。勝ち越しを狙うクリッパーズはグリフィンがハイポストからジャンパーを狙うがミス。しかし、リバウンドをバーンズが押さえ、すかさずタイムアウト。同点のまま、試合は残り30秒を残すのみとなった。

再開した攻撃で、クリッパーズはクリス・ポールにボールを託した。ポールはグリフィンをピックに使って、右エルボー付近からジャンパーを狙うが、わずかにショート。しかし、ブロックに跳んだダンカンがポールにわずかに接触しており、ファウルの判定。残り13秒で、2FTが与えられた。

この2本をポールが沈め、109-107。スパーズはタイムアウトをとり、最後の攻撃に賭ける。
サイドラインから左エルボーのダンカンにボールが入る。ダンカンからハンドオフでボールを受けたベリネリは、トップオブキーからジャンパーを狙うが、とっさにスクリーナープレイでペイントにカットしたダンカンへのパスに切り替える。ダンカンのシュートは待ち受けていたバーンズがブロックしたかに見えたが、ベリネリからスイッチしてダンカンを遅れて捕まえたレディックが、後方からファウルをしており、ダンカンに2FTが与えられた。残り8.8秒。

この場面でダンカンは、ポール同様、冷静に2投沈めて、109-109の同点。クリッパーズは最後のタイムアウト。

最後の攻撃、クリッパーズは再びクリス・ポールにボールを託す。コート中央から、マッチアップのグリーンを引き連れながら縦にドライブ。ペイントの右縁まで侵入すると、グリーンに身体をぶつけてフェイダウェイ気味にランニング・ジャンパー。ヘルプに来たダンカンの上からバンクショットが決まり、111-109。残り1.0秒。スパーズ、タイムアウト。

スパーズ、最後の攻撃。ハーフコートの四隅にプレイヤーを配置するフォーメーションからプレイを始めようとするが、ボールを入れる前にゲームクロックが作動するアクシデントが発生。やり直しとなって、スパーズはもう一度同じセットプレイ。四隅にプレイヤーを配置し、中央にスペースを取ると、ベースラインからレナードがハイポストへ飛び出し、ここで急なターンでマークのグリフィンを振り切って、アリウープを狙う。しかし、バーンズがこのプレイを読んでいて、アリウープパスをカット。ボールがコートを転々と転がる間にタイムアップ。クリッパーズが勝利した。

クリッパーズはグリフィンが24点、13リバウンド、10アシストのトリプルダブル。ポールはスリー5本を含む27点。要所で活躍したバーンズが17点。
スパーズはダンカンが27点11リバウンド。パーカーは両チーム最多の21本のシュートを放ち20点、グリーンは16点5ブロックと攻守で活躍した。



ほとんどの時間帯を3点以下の得点差でリードが入れ替わり続ける大接戦を制したのホームのクリッパーズ。ベンチプレイヤーの活躍や、グリフィンのトリプルダウンもあったが、ゲームをコントロールし、最後に勝負を決めたのは、リーグNO.1ポイントガードといわれるクリス・ポール。故障の影響で明らかに脚を引きずっており、ピックアンドロールからペイントに侵入しアシストを量産するいつものプレイはほとんどできなかったが、常に大声でチームを鼓舞し、ジャンプシュートを正確に沈め、クラッチタイムでは1対1でゲームを決めた。

スパーズは王者らしい戦いを見せた。中軸のダンカン、パーカーがゲームを引っ張り、ロールプレイヤーも見せ場を作った。試合巧者らしさも随所に見せ、ホームのクリッパーズに最後まで大きなリードを許さなかった。しかし、いつもなら相手の気持ちを折り、じわじわリードを広げる場面で、この日はクリッパーズを追い落とすことができなかった。

連覇を逃したスパーズは、この夏、ダンカン、ジノビリがフリーエージェントに、レナードが制限付きFAになる。世代交代の促進も含めた大幅なロスター変更があるかもしれない。もしも、ダンカンが引退を選択すれば、20年近く続いた「王朝」にピリオドが打たれるだろう。

一方のクリッパーズは、セミファイナルに進出し、第2シードのロケッツと対戦する。クリス・ポールの故障の回復が気がかりだが、スパーズを下し、攻撃が魅力の好チームから勝負強い真の優勝候補に進化した感がある。球団初のカンファレンス・ファイナル進出、そしてその先に続くリーグ制覇も決して夢ではなくなってきた。

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NBAのトレンドはオフェンス重視か [NBA]

NBAの強豪の条件はディフェンス力だと言われてきた。プレイオフに進出する勝率上位には相手の失点を低く抑えるチームがずらりと並ぶのが通常だった。しかし、今季のNBAはトレンドが変わってきたようだ。
ディフェンスよりもオフェンス力を看板とするチームが上位に進出するようになっている。
今季前半戦のデータをもとに、この傾向を確認してみる。

まずは1試合の平均得点。平均得点ベスト10のチームのうち、8チームが勝率10位以内に入っている。ここから漏れたクリーブランド、フェニックスも含めたすべてのチームが勝率14位以上でプレイオフ圏内を確保している。
一方、ワースト10のチームはマイアミとシャーロットの勝率17位が最高。平均得点上位と下位のチームが勝率でも上位と下位に分かれている。

平均失点ベスト10のチームで勝率10位以内に入っているのは、メンフィス、アトランタなど4チームのみ。インディアナ、ユタの2チームはプレイオフ圏外に沈んでいる。
平均失点ワースト10のチームからもトロント、ダラス、LAクリッパーズの3チームが勝率10位以内に入っている。

今季のNBAは、ディフェンス力よりオフェンス力が重要であるように見える。

さて、しばしば言われるように平均得失点は必ずしもオフェンス力、ディフェンス力を表わしているわけではない。速攻主体のアップテンポのゲームをすれば攻撃回数が増えるため得点が増える。同時に相手の攻撃機会も増えるので失点も増えやすい。反対にハーフコート中心でゲームを行えば得失点ともに減る傾向にある。
そこで、NBA.COMでは PACE、OffRtg、DefRtgという数値を公開している。
PACEは1試合平均のポゼッション数(攻撃回数)。多いほどアップテンポなゲームを好み、少ないほどハーフコート中心のチームということになる。
OffRtgとDefRtgは100ポゼッションあたりの得点と失点。必ずしもこれが純粋な攻撃力、守備力というわけではないが、ゲームのテンポの影響を大きく受ける平均得失点よりもそのチームの攻撃力、守備力を的確に表わしているといえるだろう。

興味深いのは、勝率で首位を走るゴールデンステイト・ウォリアーズだ。平均失点は15位だが、DefRtgは1位。リーグでもっとも速いPACEでゲームをすすめるため相手の攻撃機会も増えてしまうが、実際には守備は非常にいいことが分かる。
勝率上位10チームのうちDefRtgベスト10チームは6チームで、ワースト10チームはゼロ。特に勝率上位5チームはすべてDefRtgベスト10チーム。と、平均失点では分かりにくかったがDefRtgで見れば、やはりディフェンス力は重要であるようだ。


PTS OP.P OffRtg DefRtg PACE
1 Golden State 1 15 2 1 1
2 Atlanta 6 4 5 6 15
3 Memphis 15 1 11 7 25
4 Houston 7 17 13 8 3
4 Portland 8 8 10 3 10
4 Toronto 5 21 4 18 19
7 Dallas 3 23 3 14 12
8 Los Angeles C 2 22 1 19 14
9 San Antonio 12 3 12 4 22
10 Chicago 9 12 9 13 18
11 Washington 18 9 14 5 17
12 Cleveland 10 13 6 23 24
13 Milwaukee 19 6 17 2 13
14 Phoenix 4 28 7 17 2
15 Oklahoma City 13 11 16 10 8
16 New Orleans 17 16 8 25 27
17 Charlotte 27 5 29 9 23
17 Miami 28 2 20 21 30
19 Brooklyn 26 14 24 20 26
20 Boston 11 25 23 15 4
21 Detroit 21 18 18 16 20
22 Indiana 23 7 27 11 21
23 Denver 14 26 21 22 5
24 Utah 24 10 15 27 28
25 Sacramento 16 27 19 26 9
26 Orlando 25 24 25 24 16
27 Los Angeles L 20 30 22 29 11
28 Philadelphia 30 20 30 12 6
29 Minnesota 22 29 26 30 7
30 New York 29 19 28 28 29


さて、本当に重要なのは攻撃なのか守備なのか。これらの数値のうち、勝率との相関性のもっとも高いものはどれだろうか。
ここでは、チームごとに(勝率順位 - 各数値の順位)の絶対値をとり、その平均値を算出してみた。
つまり、それぞれの数値と勝率で順位の並びが似ているほど小さい値となる。たとえば、勝率とぴったり並びが同じになれば0、真逆に並べば15、相関性が無い場合は8程度の値となる。
結果は以下の通り。

PPG 4.67
OPP.PPG 7.2
OffRtg 4.4
DefRtg 5.33
PACE 9.67

勝率の並びともっとも近いのは、OffRtgだった。つまり、強いチームはOffRtgが高く、弱いチームは低い。あたりまえのことを言っているようだが、他の数値に比べると例外が少ないということだ。
DefRtgも一定の相関性を見せたが、平均得点よりも相関性は低かった。
平均失点は相関性がほとんど見られなかった。

やはり、今季のNBAはオフェンス力がチームの成績を分けていると考えられる。

さて、ゲームのテンポとチームの成績に関連はあるだろうか。速攻主体とハーフコート型のチームのどちらが結果を残しているか。
勝率上位10チームのうちPACEベスト10のアップテンポ型チームは3チーム、ワースト10のスローテンポ型は2チーム、中間が5チームとなった。また、全体でも勝率とPACEの相関性はまったく無し。
しかし、数年前にはハーフコート主体で平均失点を低く抑えるタイプのチームが成績上位にずらりと並んでいたことを考えれば、トレンドとしてはスローからアップテンポに振れてきているとも言えるだろう。

ゴールデンステイト、ポートランド、ヒューストンの3チームはそんなトレンドを体現して成功しているチームだろう。アップテンポなゲームを好み得点力が高い。しかし、ディフェンスも強固。「走っても、走られない」というバスケットをしている。

トロント、ダラス、クリッパーズもハイスコアリング・ゲームを志向するチームだが、上記3チームよりテンポが遅くハーフコートの比重が高い。しかし、ディフェンスにもろさが見られるのが玉にキズ。アトランタ・ホークスもよく似たタイプだが、ディフェンスが強いところが他のチームに差をつけているポイントになるだろうか。

反対に、スローテンポで相手の失点を低く抑える古典的な強豪スタイルで戦っているのが、メンフィス、サンアントニオ、ワシントンといったチーム。
ちなみに、メンフィス・グリズリーズは平均失点ではリーグ1位だが、DefRtgは7位(OffRtgは11位)。ディフェンスは強い方だが、圧倒的なわけではない。ロースコアの試合に持ち込んで、接戦をものにする勝負強さが最大の武器といえるだろう。

同じようなスタイルを目指しながら結果が出ないのが、マイアミ、ブルックリン、ニューヨークといったところ。平均失点が低いのは、ゲームのテンポが窮めて遅いからで、実際はディフェンスはよくない。オフェンスに爆発力が無いので、スローダウンしてロースコアゲームに持ち込もうという戦術だろうが、それで勝つにはしっかりしたディフェンス力が必要になる。

最後におもしろいのは、いまやドアマットの代名詞になったフィラデルフィア・シクサーズ。若くてアップテンポなゲームを志向するチームだが、DefRtgは12位と悪くない。通常、若手主体でトランジションゲームを行う勝てないチームはディフェンスがルーズになりやすいのだが、シクサーズはそこがしっかりとできている。得点力が壊滅的に悪いので勝利に結びついていないが、意図を持ってチームを作っており、今後に期待が持てる。


ゴーン・ガール [映画]

アメリカの田舎町で暮らす夫婦。結婚5周年の記念日に妻が失踪する。
徐々に夫が事件に関与したとみられる状況証拠が見つかっていき、テレビのワイドショーを巻き込んだ大騒動になるが。

サスペンスドラマのように見せかけて、この物語のテーマは別のところにある。それが分かったところで、冒頭からのすべてのモノローグが鮮やかな意味を持って甦ってくる。モノローグはドラマの背景を埋めるための小道具ではなく、むしろドラマが背景でモノローグこそが物語のテーマを紡いでいる。

夫ニックがテレビの中で弁護士に振り付けられた通りに語る姿を、妻エイミーが身を乗り出して見るシーンがこの物語のもっとも重要な場面だろう。だから、これはどこまでもコメディなのだ。

この物語の背景には、ニューヨークとミズーリの対比として描かれる二つのアメリカがある。
妻はニューヨークの生まれ。作家の母を持つインテリ家庭で育った才媛だ。しかし、夫の故郷ミズーリは保守的で、夫が高校生の頃とたいして変わらない人間関係の中で専業主婦として暮らしていた。
保守的な町では専業主婦であることがステータスだ。それで暮らしが成り立たなければ、パートタイムの仕事に出る。ハーバードの学位があっても、意味は無い。
主婦たちは、テレビのワイドショーをあてがわれて、そのくらいしか楽しみなく暮らしている。そのワイドショーが男である夫ニックに復讐することになる。

女の敵は女だ。
夫の妹、刑事、妻の母、愛人、トレーラーハウスの女、ワイドショーのキャスター、野次馬。
女は皆強く、男たちは弱い。
事件の展開にうろたえ、引退したフットボール選手のような弛緩した顔つきと体つきでうろうろする夫のニックの様子が象徴的にそれを表している。

物語が進につれて、さまざまな顔を見せていく妻エイミーをロザムンド・パイクが好演。

Gone Girl (2014)
デビッド・フィンチャー 監督
ベン・アフレック
ロザムンド・パイク


映画「桐島、部活やめるってよ」の読み方 [映画]

この映画のもっとも重要なメッセージは
「おれたちはゾンビ映画が大好きだ」
ということだ。
これは、主人公に仮託した映画製作に関わった者たちの心の声だ。

しかし、映画には金がかかる。
そこで、「最近、話題の小説がありまして、それを原作に映画が作りたいです」ということにして金を集めた。

スクールカーストの最上位にいる野球部は、何がどう間違ってもプロ野球選手にはなれない。だからといって、転落の人生が始まるわけではない。野球部は、スポーツマンでイケメンだ。明るい性格で、それなりに努力をすれば、たいていのことはできてしまう。普通に大学に行き、普通に就職しても、「普通の人」のカテゴリーの中ではそれなりに勝ち組でいられる。

一方、最下層の映画部はどこまでも最下層のままだ。わずかな稼ぎをつぎこんで、売れるあてなどない自主映画を作り続けるだろう。
万が一、プロになったとしても野球部を逆転できるわけではない。メジャーで公開される映画を撮っても食えない監督は大勢いる。経済的なことだけではなくて、そもそも映画という悪魔に魂を引かれている限り地獄の底を這うように生き続けるしか仕方ないのだ。

そんな映画部でも、
「おれたちはゾンビ映画が大好きだ」
と叫ぶ時だけ、その声に少しだけ嬉しそうな色が帯びる。
それは、永遠に続く漆黒の闇の中にほんの一瞬キラリと輝く光なのだ。
だからこそ、その叫びは映画にする価値がある。映画にしなければならない。映画部たちはそう思う。

ドラフトされる可能性を信じて部活をやめない野球部の愚かな先輩は、スクールカーストの外にいる。上でも下でもなく、その外にいる。
野球部であることにステータスを求めない。しかし、野球をすることが将来、何の役にも立たないということへの疑問も感じない。ただ野球が好きで、野球をしている。
カーストからの解脱。彼は、寒山拾得なのだ。

しかし、同じようにただ映画が好きで映画を作っている映画部は、涅槃からはほど遠い。映画という地獄に囚われ、生きたまま焼かれている。
だから、
「おれたちはゾンビ映画が大好きだ」
と叫ぶのだ。叫ばなければならない。

「なぜゾンビ映画なのか?」
という疑問を持った人は幸せだ。少なくとも、そうなる資格がある。
これは、理由を問う問題ではなく、ただ「分かる」か「分からない」かの問題だからだ。
分かってしまった人の魂は地獄にある。映画という地獄だ。そこで未来永劫焼かれ続けるのだ。
タグ:桐島
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NBAにみる農業的ビジネスと金融的ビジネス [NBA]

今季のNBAは西高東低の傾向に拍車がかかっている。東が勝率5割超のチームがプレイオフ進出枠8チームに満たないのに対して、西は7割超えが7チーム、11チームが5割ラインを超えている。

こうした傾向は10年以上にわたってみられている。理由のひとつとしては、イリーガルディフェンス・ルールの撤廃後の戦術の国際ルール化への対応、欧州を中心とした非北米型選手の受入れ態度の違いに求めることができるだろう。
伝統的に、寒い東海岸は90年代のピストンズ、ブルズ、ニックスに代表されるフィジカルなディフェンスを好み、温暖な西海岸はレイカーズやサンズに代表されるアップテンポなハイスコア・ゲームを好む傾向にある。(気候とフランチャイズの住民気質、チームの戦術の関連性は北米の他のスポーツでもみられる。イタリアとフェニックスで成功したスタイルでニックスをプレイオフに導いたダントーニが翌シーズンの低迷で早々に解任されたのは、やはりそのスタイルがニューヨーカーに支持されなかったからだろう。)
そうした下地がここ10年の戦術の変化への順応の速さに影響していると推測することはできる。
しかし、人材の流動性が高いNBAで10年以上こうした変化への対応が放置されているとは考えにくく、さらに東西格差が拡大する傾向にあることを説明するには別の理由を考えてみる必要がある。

ここで考えてみたいのは、金融型経営モデルと農業型経営モデルの違いについてだ。
昨年優勝したサンアントニオ・スパーズは17年連続でプレイオフに進出し、その間、5度の優勝を果たしている。その間、将来の殿堂入りが間違いないビッグマン、ティム・ダンカンを擁していることは間違いないアドバンテージであるし、北米以外で育った選手が圧倒的に多いことも特徴ではある。
しかし、ここでとりあげたいのはこの間、グレッグ・ポポビッチがヘッドコーチを務めているという点である。ポポビッチは今季で19シーズン目を迎える異例の長期政権だ。もちろん、ポポビッチの優れた手腕も特筆すべきだが、それ以上にポポビッチを解任せずに継続的に指揮を任せた経営陣と(圧力団体としての)ファンの判断に注目したい。
たしかにポポビッチの業績を見れば解任する理由がないように見えるかもしれないが、プレイオフに進出しても解任されるヘッドコーチが多くいる中で、やはりこれは特別なケースといえる。

西地区ではユタ・ジャズのヘッドコーチを23シーズン続けたジェリー・スローン、ヘッドコーチは交代しながらも80年代から21季連続してプレイオフに進出したポートランド・トレイルブレイザーズなど長期安定型の事例が多くある。

一方、東地区のチームは新陳代謝のスピードを速くしようとする傾向が高い。たとえば、ニュージャージー(現ブルックリン)・ネッツは、2002、03と連続してファイナルに進出したが、翌年ファイナル進出に失敗すると若手スターのケニオン・マーティンを放出しチーム改造を図った。しかし、成績は上向かず低迷期に入っていく。

NBAでは、中位に安定して留まるのがもっとも悪いとされてきた。成績の悪いチームは、上位ドラフト指名権を獲得したり、トレードやフリーエージェントで有力な選手を獲得するための大改造も行いやすい。安定を求めて、優勝できないまま、中心選手が高齢化して成績をずるずると落としていくのがもっとも悪い。したがって、上を目指して変化を求めるか、それができないなら一度チームを解体して新しい体制で優勝を目指すのがよいと考えられてきた。
しかし、近年はチームを解体して再建期に入っても、そこからなかなか浮上できないチームが多くなってきた。

東地区のチームには、現有戦力への見切りが早く、早々に大規模な解体を行って再建期に入るチームが多い。これを金融型モデルと呼びたい。短い期間での利益を最大化するために、早いタイミングで大きな変化を求めるやり方だ。
東地区の球団は都会的でフランチャイズ人口が多く球団の資産価値も大きいため、大企業や投資家がグループを作ってオーナーとなることが多い。中には純粋に投資の対象としてみているオーナーもいる。そのため、経営方針も投資的観点での合理性を求めやすくなる。

一方、西地区のチームは比較的、継続性を求める傾向がある。これを金融的モデルに対して農業的モデルと呼びたい。
背景には、大富豪が球団株式の大半を保有して経営判断に強い影響力を持っていることがあるだろう。(比較的、フランチャイズ規模の小さい西地区の球団なら大富豪が個人で所有しやすい。東地区のチームはそれより高価なので、個人では手が届きにくくなるのだろう。)
大富豪のオーナーの場合は、投資的合理性に基づく判断に拒否権を発動することができる。
短期的な利益を最大化する論理は投資的な理論で合理的(機械的)に求めることができるが、長期的な利益については困難になる。それは、リスク(将来に対する不透明性)が大きくなるからだ。
つまり、強い個人が経営に大きな影響力を持っている方が、リスクをとる判断ができるので、長期的な視点での経営がしやすくなる。
大富豪の個人所有でなくても、地元の企業や富裕層がオーナーグループを形成している場合も、それに近い状況になる。
それに対して、投資家的観点での経営の場合、不確実性の低い短期的な経営判断になりやすい。しかし、その結果として「大金を払ってプレイオフ1回戦止まりより、大負けしても総年俸を低く抑えれば損はしない」という判断に陥ってしまうことが多い。

最近は、一般企業でも長期的観点で経営するために株式を非上場化する場合がある。
個人商店から発展した親族経営企業の場合、企業統治がうまくいかず、乱脈経営、企業の私物化に陥る危険もある。しかし、一方で株式を上場して不特定多数が株式を所有する場合、短期的な成果を継続して出して行くこと、特に配当や株価上昇という形での成果が求められ、長期的で成果が不透明な事業や直接、利益に結びつかない事業が行いにくくなる。

現在のNBAは農業化の傾向があるのだろう。農業の中でもオーガニックに近い農業。つまり、畑の土を育てるように複数年にまたがる長期的なチー作りが重視される傾向だ。
一方、近年のビジネスは金融とネットの発達によって、どんどんスピードが速くなっている。こうしたスピード感の中で成果をあげるのが優秀な経営者だが、それはオーガニック・ファームの時間感覚とはミスマッチだ。
つまり、一般企業で優れた業績をあげる経営者ほど、NBA球団の経営では失敗する傾向にあるのかもしれない。そして、そのことが大都市でそうした人材には事欠かない東地区のチームが低迷する原因であるかもしれない。
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アベノミクスは成功するか [その他]

今年の新語・流行語大賞の候補に「トリクルダウン」という言葉があった。

野村證券の証券用語解説集によると、
「富裕者がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困者にも富が浸透し、利益が再分配される」と主張する経済理論。
とある。
いわゆるアベノミクスの景気刺激策がどのように社会全体に行き渡るかを説明するのに用いられる理論だ。

この項には続きがある。
開発途上国が経済発展する過程では効果があっても、先進国では中間層を中心とした一般大衆の消費による経済市場規模が大きいので、経済成長にはさほど有効ではなく、むしろ社会格差の拡大を招くだけという批判的見方もある。

7-9月期のGDP速報値が2期連続でマイナスになった。その理由は、上記の文章で説明できる。
内訳を見ると消費の落ち込みとそれを見越した企業が設備投資を控えたことが大きな要因になった。現在の日本は個人消費がGDPの約6割を占めている。金融緩和と財政支出による景気刺激を分厚い個人消費が打ち消した形だ。

民主党の選挙公約にある「豊かな中間層を復活させる」というのは2008年のアメリカ大統領選でオバマが掲げた公約の焼き直しだ。これは、ブッシュ政権の経済政策と重ね合わせたアベノミクス批判と受け取っていいだろう。

ブッシュ時代のアメリカの経済政策は富裕層減税が中心だった。減税で生まれた富裕層の余剰資金が消費と投資に回り、雇用が増え景気が改善すると期待された。しかし、余剰資金は中国を中心とした海外の生産拠点に回って国内の経済発展に寄与せず、貧富の格差を拡大したという批判を浴びた。

アベノミクスにも似たところがある。
株高は米国の好景気もあって外国人投資家の買い越しによる支えられている部分が大きい。つまり株高の差益がすべて国内に還元されるわけではないこと。
円安による企業業績の改善は、ドル建ての海外収益が円換算で大きくなるためで、輸出による売上げ自体が増えているわけではないこと。多くの輸出企業は既に海外に生産拠点を移しているため円安の効果は限定的で、生産拠点が国内に戻るわけでもない、つまり、国内の雇用に直結しないということ。
一方、燃料や化学繊維、プラスチックなどの石油製品、小麦粉などの食品は価格が高騰するデメリットもある。
財政支出にしても、材料費の高騰のため公共事業の入札が成立しない状況になっている。
つまり、景気刺激策で投入した資金が国外に漏れ出し、国内の雇用や賃金につながりにくい状況がある。

ブッシュ時代は、国外に流出した資金を金融商品への投資という形でアメリカに還流させようとした。さらにその資金を一般世帯の消費に回すために、「サブプライムローン」を開発して低所得層でも簡単にローンを組んでどんどん買い物できるようにした。その結果がリーマンショックによる世界規模の経済破綻だった。

アベノミクスは同じ轍を踏まないだろうか。
タグ:アベ
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小学4年生になりすますこと

「小学4年生なりすまし事件」というのがあった。
小学4年生を名乗る人物が選挙関連のウェブサイトを作成。しかし、あまりに小学生とはかけ離れた様子にネット上で批判が集まり、NPO法人を運営する大学生の仕業であることが発覚、謝罪を強いられた。というのが、おおまかな顛末。

ネット上では、小学生への化けっぷりがあまりにお粗末である、弱い立場である小学生を装って意見表明をする姿勢が卑怯であるなどと批判が集まった。

このとき、わたしが思ったのは、そんなことではなく、「この人は本気で小学4年生を演じたつもりだったのだろうか」ということだった。小学生の設定があまりにもいい加減で、すぐにバレるのは容易に予想ができたからだ。

たとえば、河童の扮装をしてテレビのCMに登場する人がいたとする。(主に山瀬まみだ。)
それを見て、「こいつは河童になりすまして、オレたちを騙そうとしている!」と言って怒り出す人がいたら、頭がおかしいと思う。
あるいは、20代の女優がドラマで女子高生を演じているのを見て、「そろそろ制服は無理がある」という意見はあっていいが、「年齢詐称だ!」と言い出したら、やはり頭がおかしい。

CMの河童が本物の河童でないことを見破った自分の賢さを誇ろうとしているのならば、頭がおかしいだけでなく、愚かでもある。
わたしは偽小学生を大声で糾弾する人々を、そうした違和感を持ちつつ見ていたのだが、作成者の大学生は平謝りで幕引きを図ったため、実際のところ、「なりすまし」だったのか「河童的扮装」だったのか分からずじまいになってしまった。あまりに騒ぎが大きくなりすぎたため、平謝りしたのは賢明な判断だったと思う。いまさら、「わかりボケでした」と言っても火に油を注ぐだけだからだ。
しかし、もしも作成者が本気でなりすますつもりだったとしたら、恐ろしい世の中だと思う。

言ったそばからバレる嘘には罪が無い。そのつもりで、わざとバレる嘘を挟みこむのも対話の技術ではないのか。
「小学生という設定になっていますが、本当は中に大人が入ってます。そこらへんはあらかじめ了解の上、お楽しみください」という場合は、どうしたら分かってもらえるのだろうか。その旨をテロップで流さなければならないのだろうか。


それはそれとして、茂木健一郎は「意欲のある若者を叩きすぎるのはよくない」、津田大介は「小学生を名乗らず、二十歳の若者として率直に訴えるべきだった」という旨のことを言っていた。
どうやら現在の日本には「若者枠」というものがあるらしい。目立った活動をする若者を「若手論客」「若者代表」「未来の(著名な人物の名前が入る)」「天才(高校生などが入る)」といってメディアが積極的に取り上げる。
確かに日本は年功序列型の文化が根強くあり、少子高齢化で高齢者がますます元気でもあり、世代間の意識のギャップも非常に大きくなってもいるので、意識的に若者の声を取り上げる必要性はあるのだろう。
一方で、「若者を代表する意見を持っていない」「年長者に比べて見識が足りない」という意見もある。「若者」というだけで下駄を履かせてもらっているということだろう。

「天才○○」とメディアに注目されて順調に成長した例は少ない。その意味で、「卓球の愛ちゃん」は立派だが、他はそれほど思いつかない。
高校野球で日本一になっても、プロ野球では活躍できない選手もいる。サッカーでもそうで、17歳以下の世界大会で活躍しても、プロの世界に壁にぶち当たる選手は数多い。
反対にスティーブ・ジョブスもビル・ゲイツも「若者代表」として登場したわけではなかった。むしろ、彼らのような革新的な行動を取る若者が年長の有力者から好意的に受け止められることは少ないだろう。

「若者枠」で活躍する人々も、いずれ若くなくなるときが来る。年齢制限のない「フル代表」で通用する力を備えているかが問われる時が来るのだ。

津田の言う「二十歳の若者として」というやり方は「若者枠」の中に籠って戦うことを意味する。つまり、若者であることに甘えるということだ。しかし、そうして成功体験を積み上げて行くという戦略も確かにある。一方、「若者」である間だけ持ち上げられて、使い捨てにされる危険もある。
小学生を名乗ることで、当初、彼らの正体は誰にも分からず、「若者枠」というバイアスを外した彼らの実力に対する正当な評価を受けることになった。たとえ、それが度を超して厳しい洗礼だったとしても、それを得たことは大きな成果だ。
もしも、彼らが「若者」として見られることに満足せず、その枠から飛び出すために「小学生」を名乗ったのならば、たとえそれが酷い失敗であったとしても、その勇気だけは讃えるべきなのだろう。
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明日なき世界 [ロック]

「奴らは俺がおかしいと言う。でも本当のことはまげられやしねぇ」

ぼくの大好きなナラさんが今日、ツイッターに貼って流していたRC SUCCESIONの「明日なき世界」。
http://youtu.be/YTQhBLDZ24g

ぼくがナラさんを知ったのは、あの頃としてはずっと遅くて二十歳を過ぎてからでした。
でも、ぼくがナラさんを好きになったのは、文字とか言葉とか、そんなデジタルに還元できるものではなくて、彼の描く子どもの無垢な目を見つけたからでした。無垢であることは人を不安にさせます。凶暴で暴力的な印象を与えるからです。誰にも媚びず、自由であるからです。真実に誠実であるからです。
ぼくはあのとき、彼はぼくと同じだと思ったのでした。それは間違いではなかったと今日、思いました。

もしも世界が狂っているなら、狂ったように生きなければ正常を保つことはできないんだ。

「ぼくの大好きなナラさん」なんて言葉を使ったのは、初めてかもしれません。泣いてしまいそうだ。
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